新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、世界経済に大きな混乱と変動をもたらしている。生命や生活手段の喪失を受け、各国政府はこの危機に対応して大幅な介入を進め、企業は従業員、消費者、供給業者の急速に変化する需要に対応しなければならなくなっている。
世界中がCOVID-19のアウトブレイク(集団感染)に取り組むなか、アジア諸国は封じ込め戦略にいち早く先鞭をつけ、新たなプロトコルを具体化し、経済活動を再開させている。アジアはかつて数々の危機を乗り越え、そうした危機で打撃を受けたにもかかわらず、さらに強靭さを備えて浮上してきた。
本書では、アジアにおけるビジネスの展望がCOVID-19によっていかに転換しつつあるかを検討する。COVID-19が(1)中小企業(SME)のアジリティ、イノベーション、レジリエンス、(2)今後の労働、(3)グローバリゼーションの状態、(4)アジアと欧州の関係、(5)公共機関と経済的規制に及ぼす影響を理解するために、日本、韓国、フィリピン、シンガポール、ベトナムからデータを収集した。
本研究は、ビジネスのリーダーシップが、現在の極めて不確実な環境においてどのように変化しているかを考察し、SMEがこの危機に対応してどのようにイノベーションを発揮しているかを実証するものである。まず、雇用者と被雇用者の関係の変化、リモートワークがより広範に導入されるなかで労働の経済・文化的概念が変化する状況、就労制度の動向により「ロックダウン世代」にかかる負担に焦点を当てる。そして、グローバリゼーションに対する認識や、アジアの他の地域へのサプライチェーンの地域化や再編成に関する最新の傾向がどのように変化しているかを分析する。さらにアジア・欧州関係を変化させる最新の趨勢について論じる。最後に、本研究は、国家と民間セクターの関係がどのように変化しているか、双方の連携が今後も続くかどうかについてさらに詳しく検討する。