月刊丸/アフロ
日本の軍縮・不拡散政策を規定する構造を理解するには、「核政策の四本柱」と3つの要因、2つのジレンマという枠組みで見ることが有効であろう。「核政策の四本柱」とは、1968年1月、佐藤栄作首相(当時)が施政方針演説において表明した、日本の核政策を構成する4つのアプローチで、非核三原則(核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」)、核廃絶・核軍縮、米国への核抑止力依存、核エネルギーの平和利用から構成されている。この四本柱は、現在においてもおおむね維持されている。
また、日本の核政策を規定するものとして、3つの要素を考慮する必要がある。第一に東アジアの地政学的条件であり、第二に経済成長と持続可能性、とりわけエネルギー安全保障の必要性であり、そして第三に、第二次世界大戦中に広島およ び長崎に原子爆弾を投下され、唯一の戦争被爆国となり、さらに1954年の「第五 福竜丸事件」以降国内で反核の機運が高まってきたという歴史的経験である。
そして、こうした政策とその基盤を構成する要素ゆえに、日本は2つのジレンマに直面することになる。第一に、「唯一の戦 争被爆国」の国家的使命としての核軍縮 の推進と、厳しい戦略環境の中、米国の 拡大核抑止が安全保障にとって不可欠であるというジレンマである。第二に、自前の資源に乏しい日本は、エネルギー安全保障上の要請から核燃料サイクルを追求してきたが、核燃料サイクルには核拡 散リスクが伴うというジレンマである。
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